人生を語らず(88)オートバイ少女

 昔、オートバイ少女がいた

 彼女は400ccのオートバイを駆って颯爽と風を切る

 車体に同化するように身体を傾けてコーナーを回る

 解放の一瞬、確かに彼女はその時、自由を感じたはずだ

 やがて目も眩むような長い時間が流れ

 いや、それはあっという間の時間だったかもしれないが

 少女はとうにオートバイを降り

 世間の誰もがそうであるようにいくつもの困難に見舞われた

       心の奥底に悲しみを抱えながらそれでも笑顔を絶やさず

        そうやって彼女は今を生きている

        彼女の心に去来するものはなんだろう?

       君は今、颯爽と風を切っているか

※高校、大学の時分、漫画雑誌 『ガロ』 にはまっていました。取り分け好きだったのが 「鈴木翁二」。 当時彼は 「安倍慎一」 「古川益三」 (後に「まんだらけ」を起こす) とともに三羽ガラスと呼ばれ人気を博していました。 写真の 「オートバイ少女」 は名作だったと思います。つい近頃、お客さんの 「昔、バイクに乗っていたんだ~」 という会話を耳にして、この作品がふと脳裏をかすめました。イメージのままに詩にしてみました。