人生を語らず(14) 拓郎的人生

 しかしまさかこの年まで 「拓郎」 だとは思いませんでした。 確かに高校生のころは拓郎の真似ばかりしていました。 髪型はもちろん、シャツ、靴、タバコの銘柄、はては字体まで (ライブ73の歌詞は拓郎の直筆)。昔はモスコミュールばかり飲んでいた、などという記事を目にすれば早速モスコを飲んでみたし、大学の頃などはどこに行ってもモスコの注文です。拓郎が右と言えば右、左といえば左。拓郎こそが僕の生きる指針でした。 

 しかし社会人になって、やがて結婚。子供が出来たりすると、もうギターどころではないわけです。 しかもその頃僕が心血を注いだのは、仕事よりもアフター5のマージャンでした。1週間に10日はマージャン(笑)。 まさにマージャン三昧の日々でした。 拓郎はもちろんのこと音楽そのものが遠い日のことになっていきました。

 そんな僕が、拓郎ageなどという店を立ち上げて今ここにいるわけですから、人生はわからないものです。 これほど長いつきあいになるなどと高校生の僕は想像もしなかったでしょう。タイムマシーンがあったら高校生の自分に言ってあげたい。「おまえは 拓郎の店をやることになるんだぞ」 と。 彼はいったいどう答えるだろう?