マスターの独り言(16) 甦る青春

 やっちゃんが初めて店にやって来たのは2月の初め。拓郎が好きで昔はかなり鳴らしたとのこと。「でもなぁ、もう30年はギター弾いてないからなぁ」。そう言ってやっちゃんはギターを手にした。確かにコードを押さえる手つきがぎこちない。弦をうまく押さえられないので音が出ない。やっちゃんはとても口惜しそうだ。「こう見えてもハミングバード、持っているんだぜ」。それから月に1,2度顔をだしてくれた。

 つい先日のことです。「マスター、歌ってもいいかい?」。やっちゃんが手を上げたので僕はてっきり伴奏を依頼されるのかな、と思ったのですが、なんだかいつもと様子が違う。やっちゃんは颯爽とギターを手にして拓郎を3曲。明らかに上手くなっている!表情が自信に満ちている。拓郎流の言い方をすれば「おぬし、やるな」というところです。やっちゃんは相当、練習したんだと思います。

 やっちゃんみたいな人はいっぱいいると思うんだ。『拓郎age』に触発されて、何十年かの歳月を経て再びギターマンの血が騒いで・・・。そうしてみんな『拓郎age』に通ってくれれば俺も儲かる、なんてね、ゴメンこれマスターの独り言。