マスターの独り言(19) 空手の時代

  ちばてつや氏の『ハリスの旋風』が僕に与えた影響というのは計り知れません。主人公、石田国松みたいに生きたいな、とずっと思っていました。それから『少年マガジン』に連載されていた吉岡道夫氏の小説(昔はマンガ雑誌に小説があったんですね)『さいごの番長』です。この主人公、香月士郎もやはり魅力的な男でした。男はやっぱりケンカが強くなきゃな、と小学生の僕は思っていたものです。

 中学生、『冒険王』に連載されていた梶原一騎原作、つのだじろう作画の『虹を呼ぶ拳』が決定的でした。僕は極真会館の大山倍達氏に宛てて手紙を書きました。 「空手を習いたいのですが、近くに道場がありません。どうしたらよろしいでしょうか」。まさか返事が来るとは夢想だにしませんでした。ところがです、来たんですね~、返事が来たんです。なんて書いてあったと思います? 「私の本を読みなさい」です。(ちなみにこの返事のハガキは中学時代のアルバムにしっかりと納められ僕のお宝の一つです) そしてまもなく『空手バカ一代』が少年マガジンに連載されテレビ化もされ空手ブームが巻き起こりました。

 高校時代、僕は秘密練習(この響きがいいですね)に勤しみました。そういえばこの頃真剣に悩んだなぁ。空手を続ければ、繊細な指の動きが必要なギターは弾けなくなるな、俺はいったいどうすればいいんだ、と。今、思い出せば全く笑い話。思わず赤面してしまいそうです。さて、そうこうしながらどのくらい上達したか、といえば瓦10枚、レンガ1枚を手刀、肘うちで割れるようになったんですね。時を同じくしてあの伝説の、ブルース・リーの登場とあいなるわけです。

 男にとって、「強さ」は永遠のテーマだと思っているのですが、こう思うのは僕だけでしょうか。50も半ばになった僕ですが、例えば数人の暴漢に囲まれたとき「私は強いよ」とその一言で退散させる事が出来たらカッコいいではないですか。

 しかしまぁ、ホントの強さって 「生き抜く力」 ですよね。人生50年生きてそう悟りました。