マスターの独り言(39)フォーク市

 かつてエレックが一世を風靡していた頃、売り物の一つに 『唄の市』 がありました。拓郎ageで自前のイベントを企画しようと思ったとき、まっさきにこの名前が頭に浮かびました。しかし、この『唄の市』、最近でも泉谷しげるさんが実施していることを知り、「それはまずいよな」と思い、 『フォークの市』 と名づけることにしました。僕には、「うん、なかなかいいネーミングだぞ」 と思えたのですが、下のラーメン屋のおやじさんなどは、「フォークの市っていったい、何を売るんだい」 と訊いてくる始末で、どうやらフリーマーケットの一つと勘違いしているようでした。

 さてこのフォークの市、上手い人だけが参加できるような、そんな敷居の高いものではなくて、長い間、押入れに仕舞われていたギターを最近再び弾き始めた人だとか、それこそこの年齢になって初めて楽器に触れた人だとか、そんな人たちが気軽に参加できるようなイベントでありたい、と心がけています。これはまさに店のポリシーと一緒です。以前、店に入ってくるなり 「なんだこの店は、懐古趣味の店だな。人間、昔を懐かしんでいたってダメなんだ」 と訳知り顔で言い放つ人がいました。昔を懐かしんでいるわけではないのです。昔出来なかったことを今、しているんです。たどたどしい指使いが次第に滑らかになり、昔弾けなかった曲が曲がりなりにも弾けるようになる、この心地よさ。感動的です。こうした小さな感動の積み重ねが豊かな人生、というか人生の醍醐味かな、なんて思う今日この頃です。