マスターの独り言(45)月進年歩?

 パソコンにしろ携帯にしろ、いわゆるデジタル機器は日進月歩で変化し続けているわけです。この変化、即ち進歩というやつは、確かに人間の暮らしを便利にはしているのでしょうが、幸福にしているのか、と言えば必ずしもそうとは言えない、というかむしろ不幸にしているのではないか、とさえ僕には思えるのです。これは以前、ストーン氏が言っていたことなのですが、これまで人の手で2~3日かかっていた作業をパソコンならわずか数時間、数分でこなしてしまう。その分、楽になるのかと言えば別の仕事が増え、あるいは工期を短くされるだけ。東京で会議などと言えば泊まりが当たり前だったのに、長野~東京、新幹線で1時間40分、日帰りが当たり前になって、かえって疲労が増す、ということのようです。

 情報も人の移動も目まぐるしいほど早く、しかも、みんながみんなその早さの中にいるので、人の暮らしそのものが早くなったというだけで、便利になったとは言えないような、そんな気がします。もっとゆっくりでもいいんじゃないか、などと思うわけですが、ゆっくりしていたら、とてもこの厳しいビジネス社会を生きていけない、甘いことを言ってんじゃねぇよ、とお叱りを受けそうです。昨日も初めてのお客さんに言われました。 「マスター、なんでこんな儲からない店を始めたの?」。 「やりたかったからですよ」 正直なところ 僕にはそう答えるしかないのですが、儲けること、儲かることを一番目に考える発想は、そろそろ卒業してもいいのではないか? 飲食の世界だって厳しいのは当然ですが、僕はまぁ、月進年歩、せいぜいそんなスピードで充分です・・・なんて偉そうなことを言ってしまいましたが、デジタル機器についていけない、乗り遅れた中年男のひがみです。