マスターの独り言(78) 確定申告

 僕はどうやら 「脱サラ」 らしいのですが、店を始める前の10数年は、身分上、自営業者でしたので、ずっと確定申告をしていました。この時期の楽しみといったら、そうです 「還付金」 というやつです。結構まとまった額でしたので、給料日が一つ増えたような、そんなルンルン気分でした。しかし、しかしです。今年はもうその楽しみが僕にはないのです。そればかりか、今度は税金を払わねばならないのです。そして昨日、懇意にしているコンサルタントを訪ね、確定申告の手続きをした、というわけです。

 戦々恐々見守るなか、 電卓を見ずに物凄いスピードで指を動かす彼が、何やら数字を記入するや 「喜ぶべきというか、悲しむべきというか、税金、0ですね」 と言うではありませんか。僕はホッと胸を撫で下ろしました。しかし考えてみるまでもなく、これって売り上げも利益もないってことですよね。開店して1年、粉骨砕身頑張ってきた結果が (・・・なんてことはありません。ノラリクラリと言った方が正しい) 税金を払うに及ばないのです。なにやら情けないものを感じました。そんな気持ちを察したのか、彼は言いました。 「この不況のなかで店を立ち上げてですよ、最初から儲かるなんてことはないんですから」。 僕はこう答えました。 「まぁ、お金がすべてじゃないですよね。この充実感はお金じゃ買えないですよね」 さらに彼。 「私はそんなキレイ事は言いません。お金はいっぱいあった方がいいです」 「・・・」 立つ瀬のなくなった僕、なのでした。