マスターの独り言(10)ノンキ店主

 いつも辛口でならすストーン氏が 「しかし、金曜日に客がこれだけじゃ、拓郎age、大丈夫かいね?」 と相変わらず遠慮会釈なく言う。僕のほうもすっかり慣れっこになっているので 「まぁ、こんなもんでしょ」 と少しも慌てず答える。もう一人の本日のお客さんであるビレッジ氏が 「大丈夫さ、拓郎ageはこれからさ」とフォローしてくれる。

 僕の記憶している限り、オープンしてから半年このかた、「今、いっぱいなんです」と来店を遅らせて頂いたのは2回。まぁ、この数字に僕は不満はないんです。物事、そんなにうまく行ったら、誰も苦労しないやね、なぞと相変わらずノンキに構えている。そう言えばこのストーン氏には以前も言われたっけ。「マスター、やる気あるの?」。やる気、ありますよ。充分にありますよ。それが証拠に僕は今、ベースの練習に余念がないんです。お客さんの演奏にベースでサポートできれば楽しいステージになるだろうし、それがひいてはリピートにもつながるだろうし、なんてね。

 うまい具合に『伝説のベーシスト』(僕が勝手にそう言っている)ドラゴン氏が頻繁に店に通ってくれているので、彼の手ほどきを受けたいと思っています。このドラゴン氏、音楽には厳しい人です。「音楽を甘くみている奴は許さない」が口癖です。しかしここはまぁ、一つお手柔らかにね。ゴメンこれマスターの独り言。こんなこと言ってると、それこそ「マスターは音楽を甘くみている!」と叱咤されそうです。