マスターの独り言(66)これ、一冊

 前回の 「マスターの独り言」 で触れました田中秀嗣さんの 「ちゃらんぽらん男、居酒屋をつくる」 という本の中から僕が勇気をいただきましたいくつかの言葉を紹介したいと思います。

 ・むちゃくちゃ居心地が悪いわけではないが、とてもいいとはいえない。切羽詰ってもいないかわりに、満ち足りてもいない。  (脱サラに至る心境)

 ・相変わらずぐずぐずしていた。そりゃあそうだ。立ち上がろうにも、何からどう手をつけたらいいのか、皆目わからない。(中略) 泳ぎ方も知らないやつが、プールサイドに立ったところで、飛び込むことはできないのだ。

 ・とにかく、否定派と肯定派に、はっきりわかれていた。こういうときには、両方の意見を公平に検討したりしてはいけない。

 ・ぼくは、耳ざわりがよくて、いい気にさせてくれる言葉だけを、ピックアップして心に刻んだ。厳しすぎたり、暗かったりで気持ちがマイナスにむかいそうな言葉は、少々マトを射ていても、その場で聞き流した。

 ・ゼロから始めようかというときに、あれこれ考え込んでいたら、動き出す前に計画は消滅していたに違いない。

 ・夢のような話というより、もうちょっと進んだ段階で、弱気になってどうするんだ。

 ・接客なんて、いうほど簡単なことではないだろう。えっちゃん(奥さん)の料理だって、受け入れてもらえる保証は何もない。なんといっても、お金をいただくのだ。我が家で、友達を集めて宴会をするのとは、わけが違う。

 ・試合開始のゴングが鳴ったばかりだというのに、いきなりロープに追いつめられた心境になってしまった。しかし、いくらなんでも、開始早々にタオルを投げるわけにはいかない。

 ・できるかもしれない。いや、できる。ここでやらねばいつやるんだと、拳を握るほどの物件が、とうとう出てきたじゃないか。

 ・いくらなんでも、これから店をやろうという人間が、家でごろごろはないんじゃないか。旅に出ようと考えた。

 ・(ええ店、つくれそうや) 笑いの底から、自信めいたものが湧いてきた。

 ・結局、初日は、ドアが開くたびにおたおたし、オーダーが通ってはふらふらし、何が何だかわからないままで終わった。

と、ごく一部を抜粋してみました。脱サラに至る心境に始まり、店をオープンした後のトラブルまで、この本はこれから先も僕のバイブルであり続けると思います。